Living in Germany

ドイツ人と国際結婚。夫&娘とドイツ暮らしです。

 

 

 

 

☆リナーテおばさんの壮絶な人生

旦那の親戚のリナーテおばさん。血縁関係はありませんが、まるで親戚。ママの幼馴染です。もちろん私たちの結婚式にも来てくれました。クリスマスや誕生日を毎年一緒にお祝いしていましたが、リナーテおばさんも80歳を超え高齢になり、病気になったりで最近は旦那の実家に来ることも減っていて長らく会っていません。

10月3日はドイツの統一記念日。昨年は秋にフルダにあるポイントアルファを訪ねドイツの東西分裂のことについて学びました。その時の記事にも書きましたが、以前は東西ドイツを分けていた場所に「ベルリンの壁」があったのだと思っていたぐらい無知だった私。

歴史好きの旦那に色々教えられ、またドイツに住む以上そういったこともわかっていないとと興味を持った頃にそのリナーテおばさんが昔、東ドイツから西ドイツに逃げてきたのだと旦那に聞きました。いろいろ壮絶な体験をされているようで、私は直接その話をリナーテおばさんから聞いたことはありませんでしたが、是非話を聞いてみたいと思いながら会うことが無かったのですが、ようやく先週末に会うことができました。娘の紹介も兼ねておばさんの家を訪ねてきました。

旦那のママとリナーテおばさんが知り合ったのは2人がまだ子供の頃、当時はドイツ領であった東プロイセンに住み、家族ぐるみで仲良くしていたそうです。当時の東プロイセンは現在はポーランドとロシアの一部になっています。東プロイセンに住む人々は第2次世界大戦で当時のソ連軍を恐れて多くの住民が西ドイツに逃げました。その逃げた住民の中にママとリナーテおばさん家族も含まれます。その逃げた先がベルリンでした。ただ、同じベルリンでもママが逃げてたどり着いたのが西ベルリン、リナーテおばさんが逃げたのが東ベルリンでした。とはいえ2人の家は数キロメートルしか離れていなかったらしいです。

当時は監視はあるものの東西の移動はそこまで厳しくはなかったそうで、リナーテおばさんは時々ママの家族を訪ね、また時にはお買い物などにも西ベルリンに行っていたそうです。

リナーテおばさんは東ドイツでは住民の発言すらも秘密警察により監視されていたこと、当時小さかった息子がうっかり外で何かを話したりしないかとビクビクして生活していたことなどを話してくれました。

おばさんの住むエリアの監視官が髭の長い人で、陰では「髭長親父」とあだ名をつけていたそう。そんなあだ名を付けていたことすら知れたら大変な事態。息子にはくれぐれも外では言わないようにと何度も注意したそう。

そして、東西の国境が今後さらに厳しくなるという噂を聞き、ある日西ドイツに買い物に行くと家を出てそのまま西ドイツに逃げたんだそうです。国境で怪しまれないために荷物も一切持たず、家を含め全てのものを置いてきたそう。ただ、当時5歳だった息子が大切にしているテディベアをどうしても持って行きたいと言ったそうで、それを手に歩いていたら近所の人に会ってしまい、テディベアを持っているなんて外泊か旅行ぐらいだと怪しまれ、西に逃げるとも言えず(誰が秘密警察かわからないので絶対に言えなかったそう)、当時、リナーテおばさんの旦那は数年間ブルガリアで働いており、そのご近所さんにはブルガリアに引っ越すんだと嘘をついたそう。

そして、買い物に行くと言ったまま家には戻らなかったようです。隣に住んでいたオランダ人の夫妻だけは唯一信頼できた人だったそうで、その人たちにだけ自分達が戻らなかった時は西に逃げたと理解して欲しいと伝えていったんだそうです。でも西に逃げても行く先がなく、その時に助けたのが東プロイセン時代から付き合いのあったママの家族。当初は一緒に暮らしていたそうです。ママの家族は東プロイセンから着の身着のまま逃げてきたこともあり、かなり貧しい家庭だったようですがリナーテおばさんとは貧しいながらも楽しい想い出がたくさんあるようです。血はつながっていないけれどまるで姉妹のような2人です。

そしてリナーテおばさんは西ベルリンに逃げた数年後に旦那さんを交通事故で亡くします。そこから女手一つで息子を育てました。東プロイセンから逃げて、東ドイツから逃げて・・・、壮絶な人生だったリナーテおばさん。懐かしむように色々話してくれましたが、それはそれは大変な人生だったようです。西ベルリンに逃げた当時5歳だった息子が、今年還暦を迎えます。すごく昔の話のようですが、まだ50年そこらの話。そして東西ベルリンの再統一から今年で25年。まだまだ最近の話なんですよね。

娘にとっては実の日独2人のおばあちゃんに加えてリナーテおばさんは3番目のおばあちゃんのような存在です。おばさんには娘の成長を見守ってもらいたいし長生きして欲しいな。

ワインの産地に近いおばさんの家に行く途中で売っていたぶどう。ワインの収穫が始まった今の時期だけ手に入るドイツ産の甘い甘いブドウ。1kgで2.8ユーロ。安っ。

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